わたなべクリニク院長雑記: 2012年5月アーカイブ

2012年5月アーカイブ

尿路変向術について

膀胱癌に対する膀胱全摘除術や直腸癌に対する直腸切断術は、尿や便の出る出口を新たに作らなければなりません。患者さんにとってはボディーイメージが変わり、本当に辛いことだと認識しています。ただ、そのために萎縮治療になり、手遅れの進行癌に至ることがあってはならないことと思っています。浸潤性膀胱癌の治療成績が20年前と大差がない原因の一つに膀胱全摘除術を選択するタイミングが悪いことも挙げられるのではないかと感じています。ただ、医師も人の子であり、迷う症例(尿細胞診では癌細胞はあるのだが、同定出来ない場合など)では膀胱全摘に踏み切れず後手に回ることが現実的にあります。

膀胱を摘出した後には,新たに尿の出口を手術により作らなければなりません.この手術を尿路変向術といいます.尿路変向にはいろいろな種類があり,それぞれ利点と欠点があります.年齢,病気の程度,全身状態などを考慮して決定する必要があります.

 

1.尿管皮膚瘻

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利点:

・一番簡単な尿路変向で身体への負担が一番軽い手術.

欠点:

・外とが直接つながっているので,腎臓の細菌感染が起きやすい.(腎盂腎炎になりやすい.)

・管が狭くならないように,尿管の中にステントという管を留置しておく必要があります.この管は定期的に交換する必要があります.

・尿の出口(ストーマと言います)に集尿器をつけなければなりません.

2.回腸導管

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利点:

・最も多い尿路変向で手術成績も安定している.

・尿管皮膚瘻と比べて腎盂腎炎になりにくい.

・尿管ステントの必要がない.

欠点:

・腸(約15cm)を使うので手術が大きくなり,術後の食事開始が遅い.また腸閉塞になる可能性がある.

・ストーマに集尿器をつけなければなりません.

3.新膀胱

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利点:

・お腹にストーマがなく,尿道よりの排尿が可能.手術前と見た目は変わらない. ただし,残尿が多い場合は自己導尿必要.  

欠点:

・腸(約60cm)を使うので手術が大きくなり,術後の食事開始が遅い.また腸閉塞,新膀胱の縫合不全など術後の合併症が増える可能性がある.

・尿道を残すので,腫瘍の尿道再発があり得る.

 

 最近では、技術も向上し新膀胱造設術を積極的に選択することが多い傾向です。

今年のUrological Nursing 1月号には、鳥取県立中央病院の看護師さんによる新膀胱の手術見学記が掲載されました。その際、術者コメントとして掲載された一文を併記します。

 

Urological Nursing  泌尿器ケア1月号 掲載

術者から・・・

膀胱全摘除術と新膀胱造設術は泌尿器科手術の中でも、比較的手術時間も長く浸襲も大きい手術です。本症例は、64歳男性で頻尿を主訴に受診され、尿細胞診異常で偶然に発見された膀胱癌です。腫瘍は主に膀胱左壁にあり、術前の病理組織学的診断は筋層浸潤を認める浸潤性膀胱癌であったため根治的膀胱全摘除術の適応と考えました。尿路変向術には、尿路ストマを必要とする1)尿失禁制尿路変向術(尿管皮膚ろう、回腸導管など)と、必要としない2)尿禁制尿路変向術(新膀胱造設術など)があります。本症例は、日常的にスポーツを楽しんでいる患者様でボディーイメージが損なわれない新膀胱造設術を希望されました。また、勃起機能の温存も希望されたため、腫瘍側でない右側の陰茎海綿体神経温存を試みております。

 本手術は1)右神経温存膀胱全摘除術 2)リンパ節郭清 3)新膀胱造設術の3つのパートに分かれますが、膀胱全摘除術は癌の根治性に注意しながら出血を少なく手際よく施行することが手術時間の短縮につながると考えています。一方、新膀胱造設術においては、時間が掛かっても丁寧に縫い上げることが術後のトラブルを少なくすると考えています。新膀胱造設術にはいろいろな種類がありますが、今回はStuder法を選択しました。本症例では 膀胱全摘術に90分、開腹から閉創までが6時間、出血量は1500mlであり、用意していた自己血1200mlで足りており、大きな問題はなかったと考えています。

術後の合併症として 1)腸閉塞 2)新膀胱からの尿漏などが挙げられます。尿漏は骨盤膿瘍に発展することがあるので避けなければならない合併症と考えています。よって、術後の管理として、新膀胱に留置しているカテーテル、尿管ステントの閉塞に注意する必要があります。カテーテル類の閉塞が尿漏や腎盂腎炎の原因となるからです。また、新膀胱に留置している尿道カテーテルは毎日洗浄して腸粘液で閉塞しないように管理する必要があります。

新膀胱造設術は 症例を選べばQOLも良く患者様にも喜ばれる手術です。カテーテル類は多く術後管理もやや煩雑でありますが、注意深い看護力によって患者様の周術期トラブルがなく快適にすごせるようにと願っております。

夜尿症について

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 世の中にはいろいろな学会がありまして、私が所属している学会の中にも"性機能学会"や"夜尿症学会"などがあります。

 個人的には夜尿症診察は子供と話すのが楽しいので大好きな分野です。子供の頃におねしょをした経験は誰もがあると思いますが、おねしょの多くは自然に治癒してしまいます。私自身、最後におねしょをしたのは6年生の時でしたが、当然、今はドライな夜を過ごすことができています。一応、おねしょ治療は8歳以上でほぼ毎日おねしょをするお子さんを対象としています。クリニックに訪れる方の中にはお泊まり行事の前に焦って連れて来られる方もおられますが、正直なところ毎日おねしょをしている子が完全に夜尿をしなくなるには半年はかかるので、"来週、スキー教室なんです"みたいな場合はこちらもさっさと白旗を挙げて"先生に夜起こしてもらいましょう"と提案します。実は5年生ぐらいでも、クラスに2〜4人はおねしょをしているので、小学校の先生も手慣れていますのであらかじめ先生に頼んでおくとうまいこと夜起こしをしてくれます(現役小学校教諭の家内に確認済みです)。今までの経験で、お泊まり行事で失敗した子は一人だったように記憶しています。

 さて、学問的な講釈ですが、おねしょの原因には、1)夜間の尿量が多い(水分過剰摂取、抗利尿ホルモンの夜間分泌不足)、2)膀胱機能異常(排尿中枢が未熟で排尿反射の抑制不足、脊椎の先天的異常、尿道狭窄など先天異常など)、3)ストレスによる一過性の夜尿症があるとされています。また、昔から夜尿症児の脳波の研究などもよくされており、睡眠との関係も論じられています。経験的には昼間のお漏らし(昼間遺尿)が無い限り、普通の(?)夜尿症がほとんどで、膀胱機能異常や夜間多尿(習慣性の多飲多尿は見受けられます)が原因であることは稀と考えています。

 個人的な意見としては、おねしょの時は夢の中でも排尿していることが多いので、尿意を感じたら寝ている状態で脳が排尿命令をしているのだと考えています。学問的には証明が難しいのですが、脳が命令して能動的に排尿しているので、抗コリン剤(頻尿治療薬)などで膀胱収縮を抑制する方法は主役になる治療ではないと思っています。以前、夜尿症学会のシンポジストの時に、この私見を述べたのですが議論が続きませんでした。その背景には、薬理学的な研究の方が医療従事者にとっては理路整然として研究しやすいからだと感じています。私は疫学的なアプローチも必要と考えています。

 具体的は治療ですが、夜尿症ガイドラインによると「生活指導」「薬物治療」「行動療法」の3つがあります。私は、脳が排尿命令しているのですから潜在意識にアプローチする行動療法が第一選択と考えています。もちろん生活指導が大切な事は言うまでもありません。  

 生活指導とは、夕食を食べてから水分を控える、就寝前の排尿習慣、牛乳を夜間は控える、塩分を控える(ナトリウムはのどが乾いて水分を過剰に取ってしまう原因になりますし、体内に水分をため込んでしまう作用があります)などです。また、治療方針として "起こさない""怒らない""焦らない"が3原則です。そして、お母さんの仕事が増えるかもしれませんが夜間のおむつは止めたほうが良いと考えています。異論もありますが、おむつをしている限り快適なので自覚が生まれにくいと考えています。

 

 行動療法としては、私は以下の順番に試みていきます。

1.      ねるまえ日記 

 夜尿児によくあるパターンですが、ご飯食べて テレビ見て 宿題して 風呂入って 疲れ果てて眠気100%の状態で、親に言われて就寝前排尿をしてドドドと布団で寝入ってしまう子がいます。お泊まり行事の時に、意外と失敗が少ないのは寝る前の緊張度が違うからだと思います。この、ねるまえ日記は、寝る前に 昨夜は失敗したか否か?、下着は自分で替えて片付けたか?、朝自力で起きたか?を 表に○×をつけてから目覚まし時計をかけて、"漏らさないぞ、朝自力で起きるぞ!"と念じてから寝床に入る方法です。寝る前に一度しっかり覚醒して、自覚してから寝る習慣をつけることが大切です。また、漏らすのは本人に罪はありませんので叱ることは出来ませんが、朝を自力で起きるのはしつけとして教えることができるます。経験的に朝起きることができる様になると、夜尿も減っていると感じています。また、女の子の方が男の子より治りが早い印象です。日記法で、サクッと治ってしまう子は女の子に多いようです。なかなか治らない夜尿の子の性格として、あっけらかんとした明るい子が多い印象です。

 

2. 膀胱訓練

 この方法には賛否両論ありますが、尿意と戦う習慣やこの訓練を通じて夜尿に対する取り組み方を変える事が出来ると思っています。通常、年齢別平均膀胱容量は大体(年齢+2)×28mlです.目標を4-7歳;120-150ml8-9歳;250ml10-11歳;280ml13-14歳;280-300mlとして、膀胱容量の増大を試みる方法です。以下のことを毎日(3か月間程度)行い膀胱容量の増大を試みるので、やや手間がかかりますが親子で一緒に頑張ってもらう必要があります。

1)夕方(学校からの帰宅時),水分を取る(一回).

2)その後,排尿をできるだけ我慢させる.我慢できなくなったら,排尿させ排尿量を日記に記録する.

大切なことは、オシッコがしたくなったら我慢することに集中することです。この訓練は漏らさないことよりも、尿意を我慢することが大切と考えています。

 

3. アラーム法

 パンツに水分を感知するセンサーを取り付けておくと、夜尿の水分を感知し、アラームが鳴ります。子どもがそのアラーム音で排尿を抑制しているうちに、膀胱容量が大きくなっていくといわれています。アラームで覚醒排尿を促すのが目的ではなく、寝ている間の排尿抑制訓練と考えられていますが、その仕組みは謎です。私見ですが、漏れる→アラームが鳴る→ビクッと起き排尿途絶する(多くの例で漏れる量が減ります)を繰り返すうちに、潜在意識でアラームが気になり、睡眠時の排尿命令が控えられるようになるのかな?と考えています。?5000円程度の機器を購入する必要がありますが、当院では貸し出す事も可能です。

 

 ここまでで、30〜50%の子は治りますが、駄目な場合は次の薬物療法を試みます。

 

1. 抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン酢酸塩水和物)

 就寝前に点鼻(スプレー)して鼻の粘膜から吸収される薬剤で、尿を濃くして尿量を少なくする作用を持つ薬剤です。水中毒(体内の水分が増えナトリウムが低くなる状態)になる可能性もあるので投与前2〜3時間から水分を控える必要があります。夜間尿量を減らすという単純な方法ですが、3割以上の子に効きます。点鼻ではなく内服薬も認可されたようです。

 

2. 抗うつ薬

 うつ的な状態を明るくしてくれる作用ですが、一昔前までは夜尿症治療の王道の薬剤でした。眠りを浅くする作用とともに、弱いながらも抗利尿ホルモンの分泌を促す作用と抗コリン作用(膀胱を大きくする作用)を持つ薬剤です。重篤な副作用がヨーロッパで報告されてから、あまり使われなくなりました。

 

3. 抗コリン薬

 飲み薬で、尿を多く膀胱にためられるように、膀胱機能などを安定させる薬剤ですが、症例を選んで用います。

 

 いずれにせよ自然に治ることですので、焦らず治療することが肝心だと思います。また、お泊まり行事対策としては、先生にお願いするのが一番安心と考えています。

 以上のことは、昼間は漏れない事を前提にしています。昼間遺尿に関しては取り組み方が変わりますし、子供のプライドもありますから就学時前に早めに治療することが大切と思います。いずれ、このことにも触れてみたいと思います。

 膀胱炎の主な症状は、トイレが近くなる症状、いわゆる頻尿や排尿のときの痛み、尿の色が濁ってしまうなどがあります。急性膀胱炎、20代の性活動期と感染防御が弱っている高齢者に多く2峰性の年齢分布を示します。

発症の原因は細菌感染です。急性膀胱炎を起こす細菌は大腸菌が多く、細菌の感染は尿道から膀胱に入って起きます。通常は膀胱には細菌への抵抗力があるので膀胱炎を発症しません疲労や寝不足などで、体の抵抗力が弱くなると細菌に感染しやすくなり、膀胱の中の細菌が増殖して膀胱炎が発症してしまうのです。

 また、繰り返して膀胱炎を起こす方の中には、排尿障害による残尿や膀胱結石がある方や、基礎疾患として膀胱癌などがある場合もありますので注意が必要です。

 診断には尿検査が必須です。簡易的な試験紙による尿検査でも大きな間違いはありませんが、やはり顕微鏡で白血球を観察し膿尿(尿に白血球が多く存在する状態)を確認することが肝心です。一般的には注意深い問診と尿検査(検尿・尿沈渣)にて急性膀胱炎と診断し抗生剤を処方することができます。単純性膀胱炎であれば数日で治癒しますが、知覚過敏や心因性の頻尿がしばらく残ることがあります。患者さんには、風邪が治っても咳だけが残る事があるように、炎症後の知覚過敏が原因と説明しています。また、一度つらい切迫排尿を経験すると、どうしても気持ちが膀胱にいってしまい心因性の頻尿になることもあります。


 薬の服用について

2〜3日で症状が軽快するかもしれませんが、完治するまでは薬の服用を続けてください。中止した場合、再燃することもあります。ほかに服用している薬がある場合、医師に知らせてください.薬を飲んで調子が悪い場合は,内服を中止して電話で御相談ください.

 

 生活上の注意

排尿はがまんしないようにしましょう.からだ、とくに下腹部は冷えないようにしてください.外陰部は清潔を保ってください。とくに生理時には清潔に.

トイレットペーパーは前から後へ使いましょう.また、セックスは、完治するまで控えましょう.

出血性膀胱炎の場合,ワインのロゼ(赤と白の中間)位であれば気にする必要はありません.血糊がたくさん出たり,オシッコが出なくなるような時は御連絡ください.

 

 食事での注意

水分(水、お茶、牛乳など)はいつもより多めに飲むようにしましょう.目標は一日2リットルです.どんどんオシッコをして膀胱の中を洗い流す気持ちで水分を取ってください.お酒などアルコール類は飲まないでください.また、からし、わさび、こしょうなど刺激物は使用しないでください.

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