夜尿症について - わたなべクリニク院長雑記

夜尿症について

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 世の中にはいろいろな学会がありまして、私が所属している学会の中にも"性機能学会"や"夜尿症学会"などがあります。

 個人的には夜尿症診察は子供と話すのが楽しいので大好きな分野です。子供の頃におねしょをした経験は誰もがあると思いますが、おねしょの多くは自然に治癒してしまいます。私自身、最後におねしょをしたのは6年生の時でしたが、当然、今はドライな夜を過ごすことができています。一応、おねしょ治療は8歳以上でほぼ毎日おねしょをするお子さんを対象としています。クリニックに訪れる方の中にはお泊まり行事の前に焦って連れて来られる方もおられますが、正直なところ毎日おねしょをしている子が完全に夜尿をしなくなるには半年はかかるので、"来週、スキー教室なんです"みたいな場合はこちらもさっさと白旗を挙げて"先生に夜起こしてもらいましょう"と提案します。実は5年生ぐらいでも、クラスに2〜4人はおねしょをしているので、小学校の先生も手慣れていますのであらかじめ先生に頼んでおくとうまいこと夜起こしをしてくれます(現役小学校教諭の家内に確認済みです)。今までの経験で、お泊まり行事で失敗した子は一人だったように記憶しています。

 さて、学問的な講釈ですが、おねしょの原因には、1)夜間の尿量が多い(水分過剰摂取、抗利尿ホルモンの夜間分泌不足)、2)膀胱機能異常(排尿中枢が未熟で排尿反射の抑制不足、脊椎の先天的異常、尿道狭窄など先天異常など)、3)ストレスによる一過性の夜尿症があるとされています。また、昔から夜尿症児の脳波の研究などもよくされており、睡眠との関係も論じられています。経験的には昼間のお漏らし(昼間遺尿)が無い限り、普通の(?)夜尿症がほとんどで、膀胱機能異常や夜間多尿(習慣性の多飲多尿は見受けられます)が原因であることは稀と考えています。

 個人的な意見としては、おねしょの時は夢の中でも排尿していることが多いので、尿意を感じたら寝ている状態で脳が排尿命令をしているのだと考えています。学問的には証明が難しいのですが、脳が命令して能動的に排尿しているので、抗コリン剤(頻尿治療薬)などで膀胱収縮を抑制する方法は主役になる治療ではないと思っています。以前、夜尿症学会のシンポジストの時に、この私見を述べたのですが議論が続きませんでした。その背景には、薬理学的な研究の方が医療従事者にとっては理路整然として研究しやすいからだと感じています。私は疫学的なアプローチも必要と考えています。

 具体的は治療ですが、夜尿症ガイドラインによると「生活指導」「薬物治療」「行動療法」の3つがあります。私は、脳が排尿命令しているのですから潜在意識にアプローチする行動療法が第一選択と考えています。もちろん生活指導が大切な事は言うまでもありません。  

 生活指導とは、夕食を食べてから水分を控える、就寝前の排尿習慣、牛乳を夜間は控える、塩分を控える(ナトリウムはのどが乾いて水分を過剰に取ってしまう原因になりますし、体内に水分をため込んでしまう作用があります)などです。また、治療方針として "起こさない""怒らない""焦らない"が3原則です。そして、お母さんの仕事が増えるかもしれませんが夜間のおむつは止めたほうが良いと考えています。異論もありますが、おむつをしている限り快適なので自覚が生まれにくいと考えています。

 

 行動療法としては、私は以下の順番に試みていきます。

1.      ねるまえ日記 

 夜尿児によくあるパターンですが、ご飯食べて テレビ見て 宿題して 風呂入って 疲れ果てて眠気100%の状態で、親に言われて就寝前排尿をしてドドドと布団で寝入ってしまう子がいます。お泊まり行事の時に、意外と失敗が少ないのは寝る前の緊張度が違うからだと思います。この、ねるまえ日記は、寝る前に 昨夜は失敗したか否か?、下着は自分で替えて片付けたか?、朝自力で起きたか?を 表に○×をつけてから目覚まし時計をかけて、"漏らさないぞ、朝自力で起きるぞ!"と念じてから寝床に入る方法です。寝る前に一度しっかり覚醒して、自覚してから寝る習慣をつけることが大切です。また、漏らすのは本人に罪はありませんので叱ることは出来ませんが、朝を自力で起きるのはしつけとして教えることができるます。経験的に朝起きることができる様になると、夜尿も減っていると感じています。また、女の子の方が男の子より治りが早い印象です。日記法で、サクッと治ってしまう子は女の子に多いようです。なかなか治らない夜尿の子の性格として、あっけらかんとした明るい子が多い印象です。

 

2. 膀胱訓練

 この方法には賛否両論ありますが、尿意と戦う習慣やこの訓練を通じて夜尿に対する取り組み方を変える事が出来ると思っています。通常、年齢別平均膀胱容量は大体(年齢+2)×28mlです.目標を4-7歳;120-150ml8-9歳;250ml10-11歳;280ml13-14歳;280-300mlとして、膀胱容量の増大を試みる方法です。以下のことを毎日(3か月間程度)行い膀胱容量の増大を試みるので、やや手間がかかりますが親子で一緒に頑張ってもらう必要があります。

1)夕方(学校からの帰宅時),水分を取る(一回).

2)その後,排尿をできるだけ我慢させる.我慢できなくなったら,排尿させ排尿量を日記に記録する.

大切なことは、オシッコがしたくなったら我慢することに集中することです。この訓練は漏らさないことよりも、尿意を我慢することが大切と考えています。

 

3. アラーム法

 パンツに水分を感知するセンサーを取り付けておくと、夜尿の水分を感知し、アラームが鳴ります。子どもがそのアラーム音で排尿を抑制しているうちに、膀胱容量が大きくなっていくといわれています。アラームで覚醒排尿を促すのが目的ではなく、寝ている間の排尿抑制訓練と考えられていますが、その仕組みは謎です。私見ですが、漏れる→アラームが鳴る→ビクッと起き排尿途絶する(多くの例で漏れる量が減ります)を繰り返すうちに、潜在意識でアラームが気になり、睡眠時の排尿命令が控えられるようになるのかな?と考えています。?5000円程度の機器を購入する必要がありますが、当院では貸し出す事も可能です。

 

 ここまでで、30〜50%の子は治りますが、駄目な場合は次の薬物療法を試みます。

 

1. 抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン酢酸塩水和物)

 就寝前に点鼻(スプレー)して鼻の粘膜から吸収される薬剤で、尿を濃くして尿量を少なくする作用を持つ薬剤です。水中毒(体内の水分が増えナトリウムが低くなる状態)になる可能性もあるので投与前2〜3時間から水分を控える必要があります。夜間尿量を減らすという単純な方法ですが、3割以上の子に効きます。点鼻ではなく内服薬も認可されたようです。

 

2. 抗うつ薬

 うつ的な状態を明るくしてくれる作用ですが、一昔前までは夜尿症治療の王道の薬剤でした。眠りを浅くする作用とともに、弱いながらも抗利尿ホルモンの分泌を促す作用と抗コリン作用(膀胱を大きくする作用)を持つ薬剤です。重篤な副作用がヨーロッパで報告されてから、あまり使われなくなりました。

 

3. 抗コリン薬

 飲み薬で、尿を多く膀胱にためられるように、膀胱機能などを安定させる薬剤ですが、症例を選んで用います。

 

 いずれにせよ自然に治ることですので、焦らず治療することが肝心だと思います。また、お泊まり行事対策としては、先生にお願いするのが一番安心と考えています。

 以上のことは、昼間は漏れない事を前提にしています。昼間遺尿に関しては取り組み方が変わりますし、子供のプライドもありますから就学時前に早めに治療することが大切と思います。いずれ、このことにも触れてみたいと思います。

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このページは、watacliが2012年5月27日 16:23に書いたブログ記事です。

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