わたなべクリニク院長雑記: 2012年4月アーカイブ

2012年4月アーカイブ

 私のホームページでも生活習慣病には体重減少を第一にしたいと偉そうに書いておりますが、プロフィール写真をみるとメタボ境界型に見えます。指導する医師が太っていて患者さんに痩せろと言うのは、タバコを吸う医者が患者さんにタバコをやめた方が健康に良いと説くのと同じで説得力に欠けています。そろそろ本気で標準体重以下を目指して頑張らなければと自戒しているところです。

 さて、以前のブログにも書きましたが、生活習慣病は食事などの生活習慣から引き起こされるわけですから、本気で治そうと思えば食生活、つまり生き方を変えなければなりません。医師は、高血圧には塩分減らせ、糖尿病の人にはカロリー減らせと簡単に言いますが、"一応 生活指導したよ・・"みたいな程度ですから、患者さんの人生を変えるインパクトはないよな〜と思います。そう考えると昨今の健康番組は良い動機づけになると考えています。生活習慣病ではありませんが、食事療法の中での 特に低タンパク食は難しいと私は思っています。腎機能が悪い人に低タンパク食にしてください、と言いますが低タンパク食ってどうしたらいいの?と聞き返されます。栄養士さんの栄養指導に立ち会ったことがありますが、約1時間かけて丁寧に分かりやすく教えてくれます。しかしながら1時間程度では、あくまで基礎知識の説明であり食事療法の入り口でしかありません。ましてや包丁を握った事もないような紳士の場合は、理解を超えた話にもみえます。

 今回は、"低たんぱく食について勉強しよう"という試みの1回目です。

 まず、腎臓の働きについて説明します。医学生に講義していた時、いつも"腎臓には3つの働きがあります。一つは体に老廃物(尿毒素)を排泄する仕事、2つめに水を排泄して体の水分のバランスを保つこと、3つめにエリスロポエチン(骨髄に赤血球作れと指示する物質)やビタミンD代謝など内分泌作用があります。ですから、急性腎不全になると尿毒素と水が貯まるため、体がだるくなったり致死的不整脈が起きたり、心臓が肥大して心不全になったり肺に水がたまったりします。慢性腎不全になると、貧血や骨代謝異常が加わります。"と説明していました。血液透析でできることは、水を取ること(除水)と一部の尿毒素を取り除くことだけですので、エリスロポエチンやビタミンDを補給する必要があります。

 さて、腎臓が弱っている人に"なぜ低タンパク食が良いのか?"と言うことです。昔は、低タンパク食は血中の尿毒素を下げるから体に良いと理解されていましたが、最近ではタンパク質など老廃物自体が腎臓を痛めつける作用があり、低タンパク食にすることで腎機能低下の進行が抑えられると考えられています。そしてタンパク質にも、体に良いタンパク質と悪いタンパク質があるようです。どのようなタンパク質が体に良いのか?、は次回に説明したいと思います。

 

追記:本屋に行くと食事療法の本はたくさんありますが、基礎知識とレシピの本がほとんどです。レシピの通り毎回作るのであれば問題ありませんが、継続できる、応用できるコツなどはあまり書かれていません。患者さん自身のブログが勉強になるように思いますので、個人的に良いかなと思ったブログを挙げてみます。

http://karadani-iikoto.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-b749.html

・・・このコツは分かりやすい と思いました。

http://ameblo.jp/mapiko-odeb/entry-11233845724.html

 

追記:レシピ通りに作り そのうちコツを習得していくのも良い方法だと思います。

http://teitan.blog33.fc2.com/

PSAとは前立腺癌があると上昇する血中腫瘍マーカーです.

前立腺癌では約90%以上の人が高値を示します.

しかし,前立腺肥大症の方でも高い値になりますし,加齢とともに前立腺癌がなくても上昇することが知られています.

つまり,"PSAの上昇=前立腺癌"があるという訳ではありません.PSAの上昇を認める場合、以下の手順で検査します.

 

初診日

1.PSA・検尿を検査します.

2.エコーで前立腺を観察します.

3.直腸診(直腸に指を入れて前立腺の硬さをみます)をします.

ここまでの検査がすべて正常であれば終診です.

念のため6ヶ月?1年後には再度PSAの検査をしてください.

PSAが当院の測定でも異常の場合は(4ng/ml以下が正常),経直腸的エコーと日帰り前立腺生検の予約をします.

 

前立腺生検

1.経直腸的エコー

2.前立腺生検(6~12箇所針で前立腺組織を採取します)

 

再診(前立腺生検による組織学的検査の結果が判ります)

 組織学的検査にて癌がある場合は,さらに精密検査が必要です.

PSA4~10ng/mlで組織学的検査にて癌がない場合は,3ヶ月おきにPSAの検査をします.

PSAの上昇が続く場合は,あらためて前立腺生検をする必要があります.

PSA10ng/ml以上で組織学的検査にて癌がない場合は,1年以内に再度,前立腺生検を御願いすることもあります.

 

 PSAが高い場合は,前立腺生検による結果が正常でもPSAを定期的に測定する必要があります.

その理由は前立腺生検の針が癌に当たっていない可能性もあるからです.

今回は米子の山本先生(山本泌尿器科クリニック理事長)のブログの引用です。

こんなことあったな と思い出しました。

あの頃は慢性的に寝不足か二日酔のどちらかでHCUのブラインドから差し込む朝日が眩しかったのを思い出します。

医者に成り立ての頃はなにも出来ず、患者さんにしてあげられることも限られていて、歯がゆい気持ちをいつも持っていました。

経験を積んだ今は、"できること""できないこと"がハッキリわかり余計に辛いこともあります。

 

山本先生のブログ・・・

パックのオレンジジュースを見ると思い出す患者さんがおられます。

僕が研修医一年目の膀胱癌の患者さんです。

シナ事変から太平洋戦争にかけての歴戦の勇士で、名前はKさん。ガンの大手術をうけられて、HCU(ICUと一般病棟の中間、HIGH CARE UNIT)におられました。本当に温厚で楽観的でいい方でした。


手術後、呼吸機能が悪く酸素分圧が上がらず、栄養状態も少しずつ悪くなってきてました。

ある日、僕と同期のS先生、二年先輩のW先生とガーゼ交換に行きました。

 

「Kさん、どうですか?」

 

「えらいいとこはないけど・・・」息も荒く明らかにさせ我慢しているのがわかります。

 

「何かほしいものはありませんか?」とW先生

 

「オレンジジュース・・・」

 

「・・・・・・・」

 

突然W先生が

 

「おい、おまえら売店にいってこい!!!」

 

「はい?、いいんですか?」

 

「行ってこい!!っていってんだろ!!」関東弁の巻き舌で怒鳴るW先生。

 

「あの・・・・・」

 

「おめーーらが行くんだよ!!ごちゃごちゃ言わずに行ってこい!!!」

 

「はいっ!!」と二人で一階の売店に走りました。

 


そのオレンジジュースをKさんはとても美味しそうに飲んでくれました。

それから数週間後、歴戦の勇士は亡くなられました。

おわり。

検診などで尿潜血反応と指摘された人の約80%には異常がないと言われております.しかし,残りの20%の人に尿路腫瘍(癌)があったり,糸球体腎炎,尿路結石や前立腺肥大症があったりします.

諸家の報告によると顕微鏡的血尿(肉眼では判らない血尿)の0.4~3.8%の人に尿路悪性腫瘍を認めると言われています.腎泌尿器科としてはこれらの病気を見逃さないため以下の検査をします.

 

初診日

検尿

尿細胞診:尿路上皮の癌の検査です.

血液検査:必要があれば糸球体腎炎の検査をします.50歳以上の男性は前立腺癌の検査(PSA)をします. 

エコー:腎臓,膀胱,前立腺を調べます

男性は直腸診にて前立腺を検査します.高齢女性の場合、必要に応じて会陰部の視診をいたします(尿道カルンクラという良性腫瘍の有無の確認)。

 

再診日

血液検査や尿細胞診などの結果説明をいたします。必要があれば腹部レントゲン, 膀胱鏡などの追加検査をします.

尿細胞診に軽度の異常を認めた場合は、3ヶ月後に再検査をいたします。

すべて異常がなければ終診ですが,40歳以上の方の場合は1年毎の尿検査とエコーをお勧めします.

 

もっと詳しく・・・・・・・・

顕微鏡的血尿の原因で頻度の高い順に列挙すると,前立腺肥大症(13%),尿路結石症(5%),尿路感染症(4%),膀胱癌 (4%),腎炎を含む腎疾患(2%),他の泌尿器癌(1%)と報告されています.

尿細胞診とは,尿路(尿の通り道)に癌があると癌細胞が混じることが多いので,顕微鏡で尿の中の細胞を病理医に調べてもらう方法です.しかし,その陽性率(癌細胞が尿に混じること)は悪性度の高い癌では80%近いですが,悪性度の低い癌の場合はわずかに10%と報告もあります.癌がある場合,全体では約50%は見つけることができると考えています.

以下は平成17年度に鳥取大学医学部同窓会誌に寄稿したものです。この後にも、いろいろ忘れてはいけない患者さんに出会っております。

 

現在(平成17年),私は鳥取県立中央病院に泌尿器科医長として勤務すること3年目を迎えていますが,基幹病院であるため排尿障害から泌尿器癌,外傷,小児泌尿器まで来る症例は様々です.来る球,来る球を辛うじて打ち返している毎日と言ったところでしょうか.赴任初年度には,髪は抜けるし,老眼も始まるしと,厄年であることを痛感させられました.市中病院では,過去の論文や留学も何の意味も持ちません.標準的な治療を施行し,標準的な結果を出すことが最も要求されています.また,最近では専門分野以外にクリニカルパスや病院感染の分野にも精通している必要があり気が抜けません.最近の医療のマニュアル化は,若い先生達のリサーチマインドを冷めさすのではないかと心配したりもしています.しかし,ご存知のように現実の医療はバリアンスの連続で思惑通りいかないものです.そして,その度に強い決断力を必要とし,そこに医療の真髄があるのだと思っています.本稿では,決断力が試された"忘れ得ぬ症例"を回想してみたいと思います.

その患児(2歳)はシスチン尿症のため,鳥大泌尿器科に紹介されてやって来ました.受診時,右腎は尿管結石のため既に無機能腎であり,残された左腎内にもサンゴ状結石を認め,早晩に腎不全になる状態でした.シスチン結石は硬いため体外衝撃波での完全破砕の見込みは少なく,内視鏡的治療が必要と判断しました.手術は左腎に腎瘻を作成し,そこから内視鏡を挿入し結石を破砕しなくてはなりません.しかし,この経皮的腎切石術は成人では多々ありますが,2歳の患児に施行した経験がありません(註:海外の文献には報告はありました).外科的侵襲により左腎機能の低下が生じることは腎不全を意味します.検討し尽くした上の最善の選択とは言え,その子の今後の人生を想像すると当時の私には決断がつきませんでした.悩んだ末,教授の部屋を訪ね,手術へ踏み切れない気持ちを正直に告げました.教授は,その場で内視鏡治療で有名な先生に電話され,手術の注意点を幾つか聞かれた後,技術的には問題はないのだから自信を持つようにと言われました.私は覚悟を決めました.手術が滞りなくできるように何度もシミュレーションを行い,遂に手術当日を迎えました.手術は頼りになる同期の先生に助手をしてもらい,多くの医局員が見守る中で始まりました.挿管され手術台で腹臥位にされた患児は,本当に小さく胸が詰まる気持ちでしたが,術者である私は手術に集中しなければなりません.超音波プローベで左腎を描出しましたが,腎臓は体表から数センチの位置にあり,通常の針でも腎杯まで届きそうでした.私は特製の穿刺針を持ち,わずかに拡張した腎杯を目指して一気に針を刺入しました.乳児の体は水分が多く含まれているせいか柔らかく,一番肝心な腎杯穿刺は想像以上に容易でした.穿刺針が腎杯に入った瞬間,教授が"よし!"と背後から言われたことを今でも思い出します.そして,出血の危険のある腎瘻拡張も問題なく施行でき,周りの先生に励まされながら腎盃鏡を用いて無事に結石を破砕することができたのです.患児は,術後も順調で予定通り退院されました.日々の臨床では良い結末ばかりではなく,自分自身にとってトラウマになるような"忘れ得ぬ症例"もあります.しかし,これらの経験がマニュアルを超えた骨太な医療となるのだと信じて,これからも頑張らなければならないのだと思っています.


治療法

1.      保存療法:自排石、つまり自然に尿道から石を排出させることです。水分を大量にとり、石の下降を促します。6~9mm程度の石なら3ヶ月以内に排出される可能性があるので、小さい結石の場合には保存療法を選択します。痛みに対しては、痛み止めの座薬か効果がない場合は病院で痛み止めの注射をするしかありません。痛みがひどい時や、熱が出て腎盂腎炎の併発が疑われる時は入院する必要があります。

特殊な種類の結石には結石溶解療法という結石を溶かす方法もありますが、効果に時間もかかり一般的ではありません。

2.      外科的治療:結石が1cm以上の時、結石がまったく動かない時、腎臓がはれた(水腎症)場合には、外科的治療が必要になります。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)はお腹を切ることなく、衝撃波で身体の中の石だけを壊す方法で一番身体への負担が少ない治療法です。また結石が硬くて大きい場合はESWLでは難しいので、尿道からの内視鏡(経尿道的尿管砕石術)か、腰部から腎臓に穴を開けての内視鏡(経皮的腎砕石術)を用いて結石を破砕し取り出します。

 

予防

 明らかな原因がないのに結石ができると言う事は、裏を返せば完璧な再発予防法がないと言うことでもあります。しかしながら、以下の事に注意すれば、結石は再発しにくいと言われています。生活の工夫と心掛けで予防や再発防止に努めてください。

1.水分をたっぷりとること:1日2リットルの尿量を保つようにしましょう。尿が薄くなれば結石の素である結晶ができにくくなります。水分なら何でも良いのですが、ビールなどは結石をつくる原因になる可能性がありますのでお勧めできません。

2.眠前の過食はやめる:"結石は夜作られる"と言います。就寝中は尿が濃くなるうえに、尿中の結石形成促進物質の濃度があがります。ですから、眠前には水分をとり、なるべく食事は控えた方が良いのです

3.カルシウムは適度にとる:カルシウムは結石の素になるシュウ酸と腸内でして結合し、体内への吸収を防ぎます。またシュウ酸を多量に含む、ほうれん草やチョコ、ナッツ類の過剰摂取には注意して下さい。

4.動物性蛋白質,脂肪の過剰摂取に注意:蛋白質は尿酸値上昇させ、また酸性化による尿中Ca上昇,尿中クエン酸(結石予防物質)減少させる作用があります。脂肪は腸内でカルシウムと結合してしまい、シュウ酸の体内への吸収が増加してしまいます。これらの作用はすべて結石再発へと繋がります。

お酒について:アルコールは利尿作用のため一時的に尿が多くなりますが、その反動で脱水になることが多いです。そのため 脱水による濃い尿になるので余計に結石が出来やすくなります。


包茎は"包皮を引き下ろして亀頭部すべてを露出できない状態"を言います.新生児では包皮と亀頭は癒着していることが多く,45歳以下の場合は亀頭部のすべてが露出できなくても正常と考えられています.ですから5歳くらいまでは治療をしないのが普通です.まずは手術以外の方法を試すことをお勧めします。小児包茎の治療に関しては専門家の間でもいろいろな意見がありますが、最近では特別な場合を除いて手術をしない方針が主流となっています.

一番簡単なのは,三,四歳を過ぎたら,おしっこがまっすぐ飛ぶように包皮をむいておしっこをする習慣をつけることでしょう.子供の皮膚は柔軟性に富んでいますので,排尿の度に尿の出口が見えるように包皮をむく努力をしていれば,自然と包皮は広がってきます.また,入浴時に自分でむいて洗う習慣をつけるのも良い方法です.また,包皮をむいたら戻すことも忘れないで下さい.これらを試みてもうまくいかない時は,泌尿器科を受診するのが良いでしょう.包皮にステロイド軟膏を少量塗りこんでから,包皮をむく訓練を1ヶ月程続けるのが効果的です.

強引にむくようなことをすると、包皮が元に戻らない状態(嵌頓包茎)になることがあります.戻らない時は病院を受診する必要があります.あせらず,無理をしないで,手で毎日少しずつ,包皮をむいては戻す操作を繰り返すことが大切です.

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亀頭包皮炎:おちんちんが赤く腫れぼったくなった場合は亀頭包皮炎を疑います。包皮の中にたまる恥垢(垢)に細菌がついて繁殖した状態です。膿が溜まり下着につくようなら包皮を亀頭から用手的に剥離して膿を除去させていただきます。抗生剤入りのステロイド軟膏を処方します。包皮を軽くむいて外用してもらいます。2〜3日で軽快します。

 

かんとん包茎に注意(むいたら戻す!):強引にむくようなことをすると、包皮が元に戻らない状態(嵌頓包茎)になることがあります。むいたらすぐに戻す習慣をつけましょう。長くむいておくと包皮がむくんで戻らないことがあります。戻らない時は早めに病院を受診する必要があります。  

              

生活習慣病という言葉が定着して久しいですが、考えてみれば良くできたネーミングと思ってしまいます。生活習慣病と呼ばれる高脂血症 高血圧 糖尿病 狭心症 心筋梗塞 脳卒中などは、多くは肥満から始まります。この肥満は、食生活が原因ですし、高血圧の原因となる塩分も醤油や味噌をよく使う日本食という生活習慣がベースにあります。

"食生活を変えろ"と医師や栄養士は簡単に言いますが、食生活を変えることは そのひとのライフスタイルを変えることを意味します。ダイエットしてはリバウンドしている自分の10年を省みれば、染みついてライフスタイルを心底から変えない限り生活習慣病は治らないのだなと実感しています。

前立腺肥大症は、尿道が狭くなる病気なので尿が出にくくなる症状は理解できるが、なぜか初発症状は夜間頻尿やトイレに間に合わず漏れてしまうなど蓄尿障害(尿をためることが出来ない)であることが多い。このことを説明するには、かなりマニアックな話なんですが、私の得意とする分野なので少しだけ解説させてください。 

前立腺は諸説ありますが、なぜか50歳頃から徐々に大きくなります。普通の臓器は年齢とともに小さくなったり、萎縮したりするのになぜか前立腺だけはプリプリと大きくなっていきます。その様子をしばしば果物のライチや丸いゴムに入った水ヨウカンに例えられます。神様はなぜ加齢に伴い前立腺を肥大させたかはいずれ持論を披露したいと思います。

前立腺が大きくなるとその中を貫く尿道が狭くなります。狭くなると、どのような反応が起きるかと言うと、頑張って狭い尿道から尿を出そうとするので、ポンプである膀胱は若い頃より頑張って収縮しようとします。その結果、若い頃より膀胱は高圧排尿を強いられる様になります。この時期を所謂 代償期と言って、見かけ上は尿の勢いなど排尿は良いように見えるわけです。そのような状況を数年から十数年続けると、膀胱も疲労して遂にはパワーダウンしてしまいます。 その結果、尿の勢いは悪くなり残尿が出現するようになるわけです。

その高圧排尿は膀胱にどのような変化が起こすのでしょうか?実は、動物実験でしか分かっていないのですが、この高圧環境が膀胱にゆっくりとダメージを与えているようです。膀胱は強く収縮するため神経(副交感神経)の命令に効率良く反応するように変化してきてしまいます。その結果、少しの神経刺激で過剰に反応する筋肉に変化してしまい、頻尿や切迫排尿などの過活動膀胱の状態になってしまうと考えられています。

日本人は本当にテレビに対して寛容な人種だと思う。私自身は、芸の無い芸人の内輪話や物まねカラオケなどのバラエティーと呼ばれる番組には、正直言って辟易している。 多チャンネル時代になって久しいが、我が家もご多分に漏れずケーブルテレビで多くの番組を見ることが出来る。個人的には映画やスポーツを沢山見たいのだが、なかなか良い番組がない。その替わりに非常に多くの通販番組が存在している。と言うより、スイッチをつけると普通に通販番組に出会うような気がしている。よく見ていると 非常にダイエット食品 ダイエット用品が多い。"長年の研究によりX成分を含むA剤を飲めば、普段通り食べながらでも1ヶ月で6Kgも減量に成功(小文字で"個人により効果は異なります"の表示つき)"という手合いの宣伝が平気で流されている。生物を少し学んだことがあれば、そんな事がある訳がないことはすぐに分かるはずだと思う。例えるならガソリンも入れないのに走る車を発明しました、に近い表現と思う。聞いた話では 昔は甲状腺剤を内服することに基礎代謝を上げて痩せる"やせ薬"が売られており健康被害続出だったそうである。

No pain, No gainであります。ダイエットの基本は摂取カロリーの抑制が王道と肝に銘じたい。

前立腺肥大症の代表的症状は"オシッコをするときにいきんでしまう。なかなかオシッコが出ない。オシッコの勢いが弱い。オシッコのキレが悪い。残尿感がある。"などの排尿障害と"夜、何度もオシッコに起きる。オシッコがしたくなったらトイレまで間に合わない。"など蓄尿障害があります。前立腺肥大症とよく似た症状を呈する病気に前立腺癌があります。当院では前立腺癌を見逃さないようにPSAという腫瘍マーカーも検査しています。

初期の症状は生活の質(QOL)を障害するだけですが、中等度以上になると尿の勢いが悪くなるばかりではなく残尿(オシッコが完全に出なくて、いつも膀胱の中に残ってしまうこと)が出現してきます。狭い通り道(尿道)からオシッコを出すためには,尿を押し出すポンプである膀胱に負担がかかります。そのため,膀胱自体にも変化が起きます.勝手に膀胱が収縮する過活動膀胱や膀胱容量が小さい硬い肉柱膀胱になったりします。また、残尿が増加に伴い慢性膀胱炎を併発しやすくなり、腎盂腎炎などの高熱が出る病気にもなりやすくなります。残尿がさらに多くなると、腎臓にまで影響を及ぼし腎不全に至ることもあります。 

前立腺は男性の膀胱の出口に位置し、オシッコの通り道である尿道を取り巻いています。つまり尿道は前立腺の中を貫いているトンネルと考えてもらうと分かりやすい。大きさは約20cm3程度で、精液の液体部分を作ります。

前立腺肥大症は、尿道を取り囲んでいる前立腺が大きくなり、オシッコの通り道が狭くなる病気です。今のところ、なぜ前立腺が肥大し始めるかはわかってはいませんが、年齢に伴う男性ホルモンの変化と関係があるようです.前立腺は40歳代から肥大を始め、50歳代で約4人に1人、60歳代で約半数、そして80歳代では実に約9割の人に前立腺肥大を認めます。そのうち治療が必要な症状のある人は約半数とされ、前立腺肥大症は、中高年男性の誰もがなる加齢による状態と捉えることができます。

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先日 ある泌尿器癌で入院した70台前半の患者さんが 誤嚥性肺炎を起こした。入院前より脳梗塞後遺症があり発語障害 嚥下障害があったそうで家人も誤嚥をいつも心配していたそうである。入院してから環境が変わったせいか夜間せん妄を繰り返し、深夜勤務の看護師さんに苦労を掛けていた。

ちなみに"せん妄"とは意識混濁状態で幻覚などのため暴れたり訳の分からぬ事を言ったりする状態である。普段は紳士であった方なのに夜間せん妄で大暴れする方も少なくはない。病気・入院や手術、そして普段と違う寝台だけでも多くのストレスが患者さんは一度に背負い込むことになるので仕方がないことかもしれない。ストレスに弱い私など必発ではないかと心配している。点滴を引き抜いたり、ベッドから出歩いたりと、せん妄患者さんが一人おられると心身ともに看護師さんを疲労させることとなる。

話しを元に戻したい。胃瘻である。その誤嚥性肺炎の患者さんの嚥下機能を評価してもらうと、口から食べ物をとることは非常に危険であるとの結果でした。自分の唾液さえ飲み込めないとの評価。脳梗塞になって数年経つが、それまでも綱渡りで誤嚥を起こさなかったと推測される。もちろん今回はせん妄状態での飲食が誘因になったのであろう。医療側の結論は 胃瘻による管理が妥当とのこと。胃瘻とは、腹に孔を開け胃に管を留置して直接胃にミルクセーキのような食物を流し込む方法である。

大学勤務時代、アルバイトで長期療養型の病院で当直することがあったが、早朝5時頃から寝ている患者さんに胃瘻から流動食をどんどん繋げている作業を見たことがある。この異様な光景にかなりの衝撃を受けた事を今でも覚えている。植物状態の人や寝ている人に胃瘻を機械的に繋げていくのである。この是非は私の立場では断言できないが、"少なくとも私には止めてもらいたい"と言うのが個人的感想である。あるアンケート結果でも、自分には胃瘻をして欲しくないとの医療従事者の答が多かったと聞いている。

結局、1)胃瘻 2)誤嚥性肺炎の再発や窒息などの危険も承知の上で経口摂取の再開が選択肢として提示し、経口摂取を再開することとなった。その後、患者さんと家族の努力や嚥下チームや病棟看護師の熱意のおかげで誤嚥せず食べられるようになり退院された。もちろん誤嚥性肺炎の再発はあるが、取り敢えずは御自宅にかえることが出来たことを考えると、安易に胃瘻をしなくて今回は良かったと思っている。

医療費の高騰は今後も止まることはないだろう。健康保険の仕組みを見直す事も大事だが、胃瘻の適応なども学会の偉い方々で一定の方針を示してもらえたら、医療従事者が悩みを一人で抱えるような問題も減っていくだろうし、医療費も少しは減少するかもしれない。同様な延命治療として、ガン終末期医療や意識のないような超高齢者透析等の指針も示してもらいたい。治る見込みのあることならば、つらい治療も乗り越えて欲しいと思うが、そうでない場合は慎重な治療方針が必要と考えている。一般に治療選択肢を並列に提示すると、たとえ患者さんにとっては地獄の日々でも家族は延命治療を選ばれることが多い。

尿路結石の症状

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尿路結石は決して怖い病気ではありませんが、あまりの痛さに多くの方は驚かれます。"突然、七転八倒の腰背部痛におそわれる"というのが典型的な症状です。これは腎臓の中にあった石が尿管にはまり込み、突然に尿の流れを妨げることによって起こります.腎臓(正確には腎盂)の尿が流出できなくなり,腎臓の中の圧力が急に上がることにより,痛みが発生します。その他、下腹部痛,嘔吐などの消化器症状,また放散痛といって陰嚢や会陰部まで痛くなることもあります。結石が膀胱の近くまで降りてくると膀胱炎に似た頻尿や残尿感などの膀胱刺激症状が出現することもあります。また結石が粘膜を傷つけるため肉眼的血尿がでることもあります。腎臓の中の石は症状が出ませんが知らないうちサンゴ状結石という大きな石になっていることがありますので、定期検査が必要です。一般的に石は膀胱の中まで落ちると尿と一緒になって出てしまいます。排石が分かる場合、分からない場合などいろいろあります。しかし、残尿がいつもあるような病気(前立腺肥大症や膀胱機能に異常のある場合)では、膀胱の中で大きくなり頻尿や排尿困難の原因となります。まれに、尿道で石がひっかかった状態(尿道結石)で受診される方もおられます。

尿路結石は、食習慣の欧米化に伴ない近年増加しており、10人に一人が一生の間に経験する生活習慣病です。しかし尿路結石80%には明らかな原因がなく、再発予防が難しいとされています。実際、再発しやすいことが特徴で5年間で約半数の人が再発すると言われています。残りの20%:の人には、痛風、糖尿病、高脂血症などの基礎疾患を認め、再発予防には原疾患の治療が最優先です。

私が医者に成り立ての頃は、慢性腎臓病(CKD)なんて呼び方は無かった。IgA腎症は予後良性の疾患と教科書には書かれていた。CKDは、別に新しい病気が見つかった訳でなく、いろいろな原因により腎機能(eGFR)が正常の60%以下になった場合や蛋白尿が続く場合をまとめてCKDと呼んでしまおうと言う概念と解釈している。この言葉ができた利点は、患者さんのみならず医療従事者も慢性腎不全になる可能性があるCKDに注意するようになった点にあると思います。以前であれば放置されていた軽度の蛋白尿や顕微鏡的血尿に対してもっと注意深く経過観察する姿勢が生まれたようです。

 さて 腎機能が悪いですよと言われた(つまりCKD)場合の治療法は、この30年で少しは進歩したようにも思いますが、画期的な治療薬の登場がないのも事実です。我々にできることは、血圧を下げる事と低蛋白食を勧めることが基本になります。

日本人の死因

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現在、日本人の死因のトップはガンで約30%の人がガンで亡くなっています。2位が心疾患の約15%3位が脳卒中の約10%である。ガンと心疾患、そして脳血管で死因の半分以上を占めていることから、日本人の三大死因と言われています。私が学生であった25年程前までは脳卒中が1位であったが、脳卒中や心疾患の死亡率が年々低下しガンがトップになってしまったようである。この原因として日本人がガンになりやすくなったと言うより超長寿国家になったことが原因と言われている。大雑把に言えば、2人に1人はガンに掛かり、3人に1人はガンで亡くなるという計算になる訳だ。毎週のように患者さんにガンの告知をしているような生活をしていたので、いつかは後ろから肩をポンと叩かれて、"ハイ、次は君の番"って言われるても仕方がないと感じている。

生活習慣病と呼ばれる高脂血症 高血圧 糖尿病 狭心症 心筋梗塞 脳卒中などは、多くは肥満から始まる。これらの図式は 厚労省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/index.html)で分かりやすく説明されているが、大雑把に言うと肥満→動脈硬化・高脂血症(・糖尿病)→高血圧→心疾患・脳卒中と言うことになる。心疾患・脳卒中は日本人の死因の2位 3位で合わせて約25%を占める。そのような背景から、長寿大国を目指す厚労省はメタボリックシンドローム撲滅に力を入れている訳である。

ちなみに理論的には10kg減量で血圧は約10mmHg下がるらしい。減塩と減量を適正に行えば降圧剤を必要としない人も少なくないとも言われている。降圧剤が150?150円、さらに高脂血症治療薬なども併用すると1日の薬料は500円近くになってしまう。1ヶ月15千円 3割負担でも5千円近い薬代を自腹で払う計算だ。書店で2000円も払えば分かりやすい食事療法の本や減量法の本が簡単に手に入る訳だから ここらで一念発起し人生を変える事も楽しい試みだと思う。本に関しては、無茶苦茶なダイエット本もあるけど、カロリー計算を基本にした本であれば大きな間違えは無いと思われる。この際、気に入った本を見つけて熟読してみることを勧めたい。

減量は、生活習慣病予防だけではなく、体が軽くなり予想以上に若返った気分になるし、良いことずくめです。まあ、疾病予防のような遠い先のことよりも、格好良くなりたいなんて身近な願望が動機になっていることが多いですけど・・

私は15年程前から、2?3年に一度 ダイエットくりかえしてきている。

つまり、痩せては太りの繰り返しを続けてきた訳である。

まるで 何度も禁煙をしている喫煙者のようなもので、最近ではダイエットが自分のライフワークではないかとさえ思い始めている。

 

高校時代はラグビー部に所属していたが、その時の体重は57Kg

役に立たない痩せたフォワード選手であった。そんな訳でレギュラーになったのも3年生が引退した2年の秋からで、チームは強かったが 私自身は三流選手であった。

大学時代もラグビー部であったが、筋トレに目覚め一挙に65Kgまで筋肉を付け、研修医時代にストレスと飲酒のせいか70Kg近い肥満に達してしまった。

その後、すくすくと育ち留学から帰ってきた頃には76Kgまで太っていた。振り返れば高校時代から20Kg体重が増えた事になる。ちなみに私の標準体重は65Kg前後である。

はじめに

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本日より 開業準備日記をかねてブログなるものを綴ってみようと思う。

まともに書き続けることができるか自信はないが、日々 健康や医療について思うことを徒然なるままに書こうと思う。

まあ、出だしからこんな硬い文章では先が思いやられますが・・

 

今まで大学病院や基幹病院で地域の医療最善線を担うつもりで頑張ってきましたが、開業医としてどのような使命を果たすことができるのか自問自答をするのも、このブログの目的と考えております。

 

目指すは"ためしてガッテン"わたクリ版です。

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