がんの評価と治療方針 - わたなべクリニク院長雑記

がんの評価と治療方針

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私は、若い先生を指導する立場にいたためいろいろな資格を修得しているが、専門医だから本当に腕が良いとか名医であるというわけではないと自覚している。専門医でなくとも良い先生はたくさんいることは事実である。さて、私がもっている資格の中でも"がん治療認定医"と"がん治療暫定指導医"がある。今回は、癌に対する基本的な考え方を簡単に述べてみたい。

 マスコミやテレビでは、名医は特別な診断をして特別な治療をしているかのようにストーリーをつくるが、実際にはいろいろなエビデンス(統計的に裏打ちされた医学的証拠)に基づいた標準治療をすることが最優先だと考えている。このスタンダードな治療をすることが、まともな治療だと認識している。ただし、現在においては解明出来ていないグレーな部分や意見が分かれる部分に関してはガイドラインにもそのように示されており、医師や治療機関によって違う治療法になることがある。

 一般的に癌に対する治療方針は、1)癌の悪性度と2)癌の進行度によって決定される。"癌の悪性度"の表し方は(高分化型→中分化型→低分化型)とか(G1G2G3)等が癌の種類によって決まっている。ちなみに→の方向に悪性度が高くなり性格の悪い癌である。一方、"癌の進行度"のことを"病期"とか"ステージ"など言うことが多いが、TNM分類というものが広く使われている。Tは腫瘍の大きさや根の深さ(浸潤度)、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移(例えば大腸癌の肝臓転移など他臓器への転移)を表す。TNM分類により病期I→病期IV等に分類することになる。

 具体的手順として、我々は、癌を疑う腫瘍をみつけた場合、まずは生検(組織を微量に採取すること)を行い"癌の悪性度"を診断する。そして病理組織学的に癌の確定診断を得られたら、CTMRIなど画像診断で"癌の進行度"(病期)を調べる。これらの結果より表1のように当てはめコンセンサスの得られた治療法が決めていく。癌の悪性度が高いほど、病期が進行しているほど大きな手術になり、他臓器転移があれば多くの場合は抗がん剤治療を中心として集学的治療(抗がん剤+放射線治療、もしくは+外科的治療など)になることが多い。

 癌の診断や治療方針は、ある意味では画一的に患者さんの気持ちの整理の早さを越えて行われていく。所謂、医師が集まり症例を検討するカンファレンスで問題となるのは、治療方針がグレーの部分(コンセンサスが得られていない部分)や重篤な合併症を持った患者さんなどである。カンファレンスでは患者さんの希望・年齢・背景なども考慮されていくことも重要なことである。

 前立腺癌などのように同じ病期でも標準治療の選択枝がたくさんある場合などは、患者さんによく説明し各治療の利点・欠点を丁寧に説明してから治療方針を決定しなければならない。ただ医療に素人である患者さんしてみれば、降って湧いたように癌の宣告をされ、どんどん進められる検査の果てに治療選択枝を3つも4つも並べられては混乱するし決断もできないことが多い。私は、一通り説明した後、"私があなたの立場ならこの治療方針を選びます"、"あなたが私の父であればこの治療法を選択します"と個人的な意見を添える様にしている。

 名医とは独善的な治療をおこなう事ではなく、標準治療を丁寧におこなう事だと考えている。手術に限って言えば、確立された手術方法とは何処で誰が行っても同様な結果が得られるものを指す。ただ、その過程のなかにも、細心の注意を払う剥離や心を込めて縫合する部分や小さなコツがあったりするわけで名医とそうではない医師との差はそのような点で評価されるべきではないかと個人的には思っている。


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このページは、watacliが2013年2月 8日 20:03に書いたブログ記事です。

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